3EIDの概要

国立環境研究所では,1997年にCO2を対象とする1975年から1990年の日本の産業連関表に基づき算定した環境負荷原単位を収録した「産業連関表による二酸化炭素排出原単位」(近藤美則・森口祐一編)を発行しました。二酸化炭素排出原単位とは産業連関表に定義された部門の単位生産活動(百万円相当量)に伴い,直接的間接的に排出されるCO2の量を示す係数です。2002年に環境負荷の項目としてエネルギー消費と大気汚染物質を加えた1995年表に基づく「産業連関表による環境負荷原単位データブック(3EID)」(南齋規介・森口祐一・東野逹(京都大学)編)を出版しました。 また,2003年より3EIDのホームページを通じたデータ提供を開始しました。3EIDは英語名である「Embodied Energy and Emission Intensity Data for Japan Using Input-Output Tables」の頭文字をとった略語です。エネルギー(Energy),環境(Environment),経済(Economy)の3Eの問題を解くための指標(InDicator)の一つとして,様々な場面で活用されることを期待して付けた名称です。その後も,日本の産業連関表の2000年表,2005年表,2011年表,2015年表,2020年表と新規発行に合わせ,エネルギー消費量と温室効果ガス排出量を中心に最新データへの更新を継続しています。2025年に2020年表版のデータベースの更新に合わせて,既に出版物でないことから日本語名称を「産業連関表による環境負荷原単位データベース(3EID)」に改訂しました。

日本の産業連関表は生産活動部門を約400部門で定義する世界で最も詳細な産業連関表の一つです。そのため大括りの産業分類に比べて,実際の製品やサービスと対応が取りやすい部門分類での環境負荷原単位を算出することが可能であり,製品のライフサイクルアセスメント(LCA)や企業活動のサプライチェーンを通じた環境負荷の推計にも適してします。3EIDは利用者が環境負荷原単位を利用して簡易に製品や企業活動の環境負荷量を算定した後,その原因を探って精度の高い算定へと展開や重要な削減策の検討につながるように,環境負荷原単位の詳細な内訳データも提供しています。3EIDの利用が,多くの企業や消費者が自身の生産や消費に伴う直接的間接的な環境負荷量を把握する契機となり,脱炭素化を始め,持続可能な社会への転換が加速する一助になれば幸いです。

(文責)資源循環領域 南齋規介
3EID